#024「ロックンロール・スーパーマン 〜Rock’n Roll Superman〜」サザンオールスターズ

反戦を叫ぶ平和の歌でもなければ、永遠の愛を誓うラブソングでもない。
これは単なる「おまじない」の歌である。
「痛いの痛いの、飛んでいけ!」
まるで泣きじゃくる子供をあやすかのような、そんな小さな小さなちっぽけな歌である。


でも、今まで聴いてきたサザンの中で、いや、今まで聴いてきたすべての歌の中で、一番心揺さぶられた歌である。好きになってしまった歌である。泣いてしまった歌である。
27歳にして、その人生観をがらりと変えてしまった歌といってもいいのかもしれない。


今までマイ・ベスト・オブ・サザンは「Bye Bye My Love(U are the one)」だった。
学生の頃から、生涯一番多く聴いたのもこの歌だし、どこの誰よりも繰り返し聴いた自信もある。今もって、名曲であることに変わりない。


どれだけ残酷な恋をしたって、好きなもんは好きなんだ。自分のこの想いはこんなにも強いんだって、まるで「世界の中心で愛をさけぶ」かのように、叙情的に絶叫的に歌ったのが「Bye Bye My Love」だとしたら、


「恋の終わりは惨めなものね 何もかも Goin' insane 哀惑う」
「人間(ひと)は誰もが悩み抱えて 傷ついて So much pains 泣き笑う」


と、どうしようもなく途方にくれる、弱くて救いようのないダメダメな自分を歌ったのがこの歌だ。


そんなネガティブばっかりの歌詞の後に、


「負けそうになったら おまじないはいつも "I'm a Rock'n Roll Superman."」


と、誰も助けてくれないから、自らで励ます。
どうしようもない自分を、自分だけがこっそり照れるかのように励ます。
桑田さんの中にある、いつも夢見るスーパーヒーロー、「ロックンロール」という言葉だけで。


歌詞だけ見てると、どんなに暗いやつなんだ、と思う。だっさい歌詞だって思う。
でもその暗さ、弱さ、みっともなさが、人間なんだって、サザンは歌う。底抜けに明るい、希望をこめた曲に乗せて。


「そして『あなたがいて幸福(しあわせ)』と、いってくれる娘(こ)に Hey, yeah… めぐり逢う」


もし「胸騒ぎの腰つき」なんてC調に浮かれ騒いでる、デビューまもないコミックバンドがこんな歌を歌ってたとしても、きっと説得力も何にもない。


でも人生の半世紀を過ぎて、年老いて見事に枯れていってる(…誉め言葉です、もちろん)今のサザンだからこそ、響くこの言霊たち。


「夢があるなら空を翔べるさ」


今もなお弱き大人たちは、本当はありもしないけど、自分だけに効く「おまじない」を胸に、今日も自らを鼓舞しているのだ!!

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