壊れた傘

自宅から最寄駅に向かうまで、壊れた傘を2本見た。


酷くひしゃげたその姿に、過ぎ去った台風の凄まじさを思う。


と同時に、忘れ去られたように放置してあるビニールと骨組に、用なしとされた「元」傘たちの悲哀を思う。


…あのまま、ゴミになるのかな。
誰かがきっと拾うだろう、いや誰も拾わないでどこかに転がっていくのだろうか。


自らが拾ってゴミ箱に捨てるわけでもなく、足は駅に向かう。


…たとえ僕が1本拾ったって、あちこちに落ちてる傘を拾いきれるわけもない。


誰に言われたわけでもないのに、そう心の中で言い訳する自分に思わず目をつぶる。


そうやって、逃げるように駅へと急いだ、曇り空の下。