生中継の脅迫状

20時50分。テレビの速報が入って、私はいつものように手持ちのケータイから緊急事態の知らせをymode.newsへ打電した。

21時からのNHKニュース。慌てるキャスターをよそに、即座に拘束された3人の映像が、アルジャジーラから直接届けられた。

目隠しの3人。目隠しを外されて手振りを添えて何か話している人質。

そして、画面いっぱいに、3人のパスポート。

名前の書かれたローマ字を、私は必死に追う。
画面がパスポートの上段にぶれる。
パスポートの映し出される「日本国」の文字。

背筋がぞくっとした。

突如おそった、妙な実感(リアリティ)。

「日本人」が、拘束された。3日後に、殺される(かもしれない)。

テレビが伝えた、生中継の脅迫状。
何度も映し出された3人のパスポートが、
「テロ(拘束)が本当の出来事である」
ことを、遠い日本で食い入るようにテレビを見つめる私の身体にまで、ダイレクトに伝えてきた。

アメリカの民間人があれほどまでにメチャクチャに虐殺された、文字通り血祭りにされた、あのモザイク越しの映像が、アメリカに住むどれほどの人々を突き動かしたのだろうか。…そんなことを、ふと思い出す。

知らなくてもいい事実まで、送られてくる映像が親切丁寧に教えてくれる、この恐ろしさ。

9・11に、自室のCNNが伝えたあの瞬間が、今よみがえる。

3日後の4・11に、悲惨な結末を見たくない。

こころから思う、そんなリアリティ。