#027「自分」小谷美紗子

Quarternote


仕事帰りの夜道、iPodから小谷美紗子がかかってくると、何とも言えないダークな気分に包まれる。
それは彼女の奏でる美しいピアノとともに、彼女から発せられる歌詞が耳から脳へ流れるだけでなく、身体の中心から自分全体に滲み出ていくような、そんな感じ。

 悲しいNEWSを見て涙を流して
 自分は温かいやつだと満足してる
 大事なのはNEWSの中身なのに
 涙にひたって泣けたことを自慢する

今時珍しく、思いの丈をストレートに、悪く言えば真正直に偽りなく歌うから、聴いているこっちは救いようもないくらいの悲しさに包まれる。
ただでさえ足取りを重くする私に、そして畳み掛けるように彼女は歌う。

 自分がすごいやつだと思わせるために
 世界の問題について真剣に語る
 そんな姿に酔っているだけで
 語るのは簡単だ 言うだけなら私にもできる

言われたくないことを言われたときに、いきおい人は憤慨するが、悶える私の心の闇を探るかのように、真夜中の歌姫は耳元で歌い上げる。
自分全体に染み出た言葉は、もう止まらない。

 もっと自分を見つめなおそう

歌が終わり、見つめなおそうと思ったら、家に着いた。

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